なぜ、福島第一原子力発電所の
事故が起こったのか?

東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故により、福島県では甚大な原子力災害が発生しました。現在、同発電所の廃炉に向けた作業が進められていますが、これは40年にも及ぶ長期にわたる工程となることが分かっていますので、自然科学的、工学的、および社会科学的な英知を結集して、様々な分野の人材が情熱をもって着実に取り組む必要があります。
東日本大震災の発生時に運転中だった福島第一原子力発電所1〜3m号機。日本の観測史上最大のマグニチュード9.0の巨大地震に見舞われ、発電所は震度6強を感知、さらに、想定していた最高水位6.1メートルをはるかに超える高さ約13メートルの大津波に襲われ、建屋内の原子炉を運転・制御するための電源を喪失しました。原子炉の圧力容器や格納容器の冷却が不可能となり、炉心が損傷、燃料も溶融、1号機、3号機、停止中の4号機が水素爆発を起こして放射性物質を環境へ大量に放出するという重大事故に至りました。事故を深刻にした大きな原因は、津波に関する防護が脆弱であったこと、すべての電源を失った場合の注水手段が十分に整備されていなかったこと、炉心損傷後の影響を緩和するための手段が十分に整備されていなかったことなどがあげられます。1~3号機が冷却機能を失ったタイミングは各号機によって異なりますが、事故の進展は各号機とも同様でした。
外観

1〜3号機の過酷事故の進展

地震発生・津波襲来

地震により倒壊した送電鉄塔

押し寄せる津波

 1  全電源喪失

地震によって受電設備の損傷や送電鉄塔の倒壊が起こり、外部から電気を受けることが不可能になりました。その後の津波による浸うぇええ水で、非常用ディーゼル発電機とバッテリー電源も喪失しました。

 2  冷却機能喪失

電源喪失などによって、すべての冷却機能が使えなくなりました。また、冷却用の海水ポンプも冠水し、原子炉内部の熱を外部へ逃がす除熱機能も失われました。

 3  水位低下

冷却水を送り込めなくなった圧力容器内では、その後も核分裂生成物の崩壊が継続し、その際に発生する膨大な熱により圧力容器内の水が蒸発し、水位が低下しました。

 4  炉心損傷、水素発生

水位の低下にともなって燃料が露出するとともに、圧力容器内の温度が上昇しました。高温の燃料は水蒸気と化学反応を起こして水素が発生し、燃料自体も高温により溶融しました。

 5  水素・放射性物質の漏洩

圧力容器と格納容器が損傷し、水素や放射性物質が原子炉建屋内に漏洩しました。1、3号機では建屋内に充満した水素が爆発して建屋が損傷し、放射性物質が放出されました。

1〜4号機の過酷事故の経緯

地震・津波の発生後、全電源を喪失した1~4号機。1号機は3月12日に水素爆発。2、3号機では原子炉隔離時冷却系や高圧注水系、消防車によって注水作業を続けましたが、2号機はベント(換気)に失敗し、3号機は14日に水素爆発。環境へ大量の放射性物質が放出されました。定期点検中だった4号機も、3号機から流入した水素に引火して爆発、破損しました。
原子力発電の仕組みは?
ウランが核分裂する時に発生する高熱で水を蒸気にします。その蒸気でタービンを回します。タービンに接続された発電機が回転し、発電します。蒸気は冷やして水に戻します。
同じ仕組みで、火力発電では石油や石炭、天然ガスなどを燃やしてつくった蒸気により発電しています。
どのくらいの熱が発生しているか?
緊急停止から5時間後でも定格熱出力の1%程度の熱が発生しています。これは数分で1トンの水を蒸発させるほどのエネルギーです。原子炉停止後も膨大な熱が発生するために冷やし続ける必要があります。