廃炉事業に興味を持ってもらい、
将来の選択肢にしてほしい。
放射線防護部
作業環境改善グループ(平成29年2月現在)
尾崎 大輔さん
福島第一原子力発電所構内での線量低減と防護装備の適正化の仕事をしています。事故直後は汚染レベルが高く、全面マスクやカバーオールの着用が必要でしたが、除染や空気中放射性物質濃度の連続監視化を進めることで多くのエリアで装備を軽減できました。今後とも線量低減と防護装備の適正化に努めて参りたいです。
大学で機械工学を学ぶ中で、特に環境とエネルギーの問題に関心を持つようになりました。学部では水素エネルギー、大学院ではCPUを効率的に冷却させるための沸騰に関する研究を行いました。就職にあたってはエネルギーの生産と管理を直接行えることを考えて電力会社を選択しました。大学では放射線に関する授業がなかったので高校で習った物理・化学レベルからのスタートでしたが、現場で学びながら第一種放射線取扱主任者の資格も取得し仕事に役立てています。廃炉には長い年月が必要なので、いろいろな分野の皆様に関心を持っていただき、将来の選択肢のひとつとして考えてもらえればと思います。
廃炉事業では、科学の知識を持った
スタッフの活躍が期待されています。
環境化学部
分析評価グループ
大友 孝郎さん
福島第一原子力発電所(1F)で2014年から働きはじめました。それまでは福島大学共生システム理工学類の高貝研究室でポスドクとして研究を行っていました。学生時代から分析化学に携わり、特に微量分析法の計測に関わる開発を続けています。1Fでは主に敷地内の現場から要求される放射性物質の分析を正確に行うために、分析プロセスの開発を進めています。試料の数が多いので外部の分析会社にも委託していますが、その工程管理も業務のひとつです。
事故後には従来の定型的な分析法の範囲を超えて新しい手法を求められることが多いために、化学反応や微量分析に精通したスタッフの活躍が期待されています。ここで働く前には1Fの現場についてニュースなどの断片的な知識しかなかったのですが、実際に身をおいてみると多くのスタッフが自分の専門を活かして廃炉に向け前向きに取り組んでいることが分かります。学生の皆様にも是非現場を直接見てもらって、また実際に仕事をしている人と話をする機会を持ってもらえればと思います。
原子吸光分析装置の
操作を行う 大友さん
研究を進めることで
環境回復の一助になれれば、と
思っています。
福島県環境創造センタ-
研究部
斎藤 梨絵さん
2016年から三春町にあります福島県環境創造センターの研究員、および福島大学環境放射能研究所で客員研究員として勤務しています。主に福島県内に生息しているイノシシなどの野生動物体内の放射性核種の分布調査や、動物の食性と放射性核種の関係を調べるための胃内容物の遺伝子解析などを行い、野生動物への放射性核種の移行や生態系への影響を調査しています。
大学院時代は水生昆虫を対象に系統地理や遺伝的多様性を評価するような分子生態学の研究をしていました。これまで研究で哺乳類を扱ったことがなく、はじめて大型野生動物の解剖に立ち会った時は覚悟を決めて臨むという感じでした。また放射線に関する知識もほとんどなかったため、研究成果を出すことができるか少し不安もありました。しかし実際に働きはじめると、県の機関での研究は、社会や関連する他の研究機関との関わりが強く、そのことで私自身の研究分野の視野を広げながら研究が進められ、今では大きなやりがいを感じています。また県が震災直後からモニタリングしていたデ-タをまとめ、県民の方々に向けた発表会や国際学会の場で発表することができたことは、とても大きな経験となり、私たちの研究と福島の復興に向けた結びつきを強く感じることができました。
慣れないことや知識不足なことも日々感じますが、福島の未来に向けて少しでもお役に立てるよう研究を進めていきたいと思います。
佐々木 美雪さん
修士論文のテーマは「電顕オートラジオグラフィを用いた風化黒雲母中放射性セシウムの局所的分布の観察」。放射線関係の研究機関で福島第一原子力発電所に関連した研究を行うため、日本原子力研究開発機構へ。現在は、放射線測定技術の研究開発に携わる。
私は、2015年に福島大学を卒業し、現在、日本原子力研究開発機構(JAEA)福島環境安全センター放射線監視技術開発Gr(南相馬事務所)で働いています。大学では、放射線に関する研究を行っており、卒業後も放射線に関する研究を行っていきたいと考え、JAEAに就職しました。
現在、南相馬では無人ヘリコプターなどを用いた放射線のモニタリングを行っています。人が入れないような森林等の上空からの放射線測定や、ダムや池、海の底の放射線測定など、状況に応じた測定手法や、上空で測定した放射線量の地上値への換算手法など、新しい測定手法の開発等を行っています。
実際に現場で測定や研究開発を行って感じることは、幅広い知見が必要になるということです。現在行っている換算手法の開発でも、市町村との協力、測定技術の開発、森林状況の把握、理論的計算等の多くの知見が必要であり、他機関との協力が不可欠です。このような連携を図ることで、自分の技術が思いもよらないところで使用されるということもあります。今後も他の機関と協力しながら新しい技術を開発していければと考えています。