キャンパス内の昆虫たち of 塘研究室

福島大学キャンパスは自然がいっぱい
福島大学のキャンパス内には里山的環境が残されており,構内の雑木林,調整池周辺,草地などには全国的に絶滅の危機に瀕している昆虫も生息しています。チョウ類とトンボ類を中心に,貴重な昆虫をいくつか紹介しましょう。

ちなみに,福島大学ではキャンパスの生物多様性保全の枠組みが提案され,現在はこの提案に従ったキャンパスの管理が行われています。

生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用の状況

 チョウ類は50種ほどが確認されており,その中の12種は東北地方のどこかの県のレッドデータブック掲載種です。雑木林に生息する種が多く,雄の翅(はね)が美しく輝くことから「森の宝石」と呼ばれるミドリシジミ類も分布しています。梅雨の晴れ間には,信陵公園,馬場横の雑木林の樹上で,オオミドリシジミの雄がその美しい翅の輝きを見せてくれます。秋にはチャバネセセリやウラギンシジミなど,南から北上してきた蝶類が現れます。
 トンボ類は16種が記録されていますが,その中の6種が東北地方のどこかの県のレッドデータブック掲載種です。美術棟近くのフトイやガマの仲間が生える調整池付近にはキイトトンボ,マイコアカネなどの貴重種が生息しています。構内で見られる5種のアカトンボの仲間(アキアカネ,マイコアカネ,マユタテアカネ,ノシメトンボ,リスアカネ)の中では,アキアカネが最も普通に見られます。
 構内では夏になると,夜の街灯下にはカブトムシとミヤマクワガタが,昼間のクヌギやトチノキの樹液には翅がメタリックに輝くカナブンやクロカナブンが集まります。また,ニイニイゼミを皮切りに7種のセミの鳴き声も聞かれます。圧倒的に多いのがアブラゼミで,最後まで鳴いているのが体長2cmほどのチッチゼミです。
 最後にちょっと変わった昆虫を紹介しましょう。5月下旬〜6月上旬の馬場横の草地には,長い触角と黄色い翅をもつキバネツノトンボが現れます。黄色い物体が猛スピードで直線的に飛び回るので直ぐに分かります。トンボという名前がついていますが,実はトンボの仲間ではありません。昔は大学構内のあちこちで見られたようですが,草地が減ってしまい,今では馬場横が唯一の生息地です。宮城県,岩手県,青森県をはじめ全国的にも絶滅の危機に瀕しています。なお,やや大型で翅が透明なオオツノトンボも,構内では夏の夜の街灯近くで時々見られます。

チョウ類
2000年以降の調査としては,私たちの研究室での2003〜2004年と2008年の調査の記録があります。この時に記録できた種類数は合わせて47種類でしたが,それ以外の年に4種類を確認していますので,現在,51種類ということになります。

キャンパス内のチョウ類リスト

ウラギンシジミ雌.JPGウラギンシジミ♀
オオウラギンスジヒョウモン.JPGオオウラギンスジヒョウモン
20080627_0172.JPGコジャノメ
コミスジ.JPGコミスジ
オオミドリシジミ.JPGオオミドリシジミ
コムラサキ.JPGコムラサキ
Fyuasa.JPG.jpegクロミドリシジミ幼虫
Sasakia2.JPG.jpegオオムラサキ幼虫
キマダラセセリ.JPGキマダラセセリ
20080708_0229.JPGツバメシジミ
20080708_0244.JPGヤマトシジミ交尾
20080812_0330.JPGスミナガシ

トンボ類
キャンパス内で確認されているトンボ類は,下の写真で示した種類以外に,オオアオイトトンボ,ホソミオツネントンボ,ハグロトンボ,ギンヤンマ,オニヤンマ,ショウジョウトンボ,アキアカネ,マユタテアカネ,マイコアカネ,ノシメトンボ,コシアキトンボ,ウスバキトンボで,それ以外に林内でヤンマの仲間と林縁部でサナエトンボの仲間を目撃しています。

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オツネントンボ.JPGオツネントンボ
キイトトンボ.JPGキイトトンボ
リスアカネ のコピー.JPGリスアカネ
モノサシトンボ.JPGモノサシトンボ

セミ類
キャンパス内で生息(鳴き声)が確認されているのは,下の写真で示した種類以外に,ツクツクボウシ,ヒグラシ,エゾゼミです。

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アブラゼミ羽化.JPGアブラゼミの羽化
チッチゼミ.JPGチッチゼミ
ニイニイゼミ.JPGニイニイゼミ
ミンミンゼミ.JPGミンミンゼミ

その他の(ちょっと変わった)昆虫たち
ニホンミツバチは変わっていませんが,電信柱の中に毎年巣を作るところは変わっているかも。フユシャクは晩秋から初春(主に冬季)に出現する蛾の仲間ですが(シャクガというのはシャクトリムシが親になったもの),♀は翅が退化・縮小する種類がほとんどで,チャバネフユエダシャクの雌には翅はまったくありません。

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キバネツノトンボ.JPGキバネツノトンボ
チャバネフユエダシャク雌.JPGチャバネフユエダシャク♀
チャバネフユエダシャク雄.JPGチャバネフユエダシャク♂
ニホンミツバチ.JPGニホンミツバチ