保全生物学実験A・B/自然環境調査法A
保全生物学実験「底生動物を用いた河川環境評価法」
実験では実際に河川に行き,底生動物を採集し,得られたサンプルからその場所の河川環境を評価します。調査河川は大学に近い水原川です。水原川の上流域と中流域の2ヶ所で調査を行い,両者の環境を比較します。
1回目は底生動物(主に水生昆虫)の現地での採集。採集はサーバーネットを用いたコドラート法に,ランダム・サンプリングを併用して行います。2回目はサーバーネットで採集した試料から底生動物をソーティングする作業とサンプルの大まかな分類(水生昆虫であれば目orderレベルまで)。
3回目と4回目はサンプルの同定。種まで名前がつかないものもたくさんありますが,とにかく採集したすべてのサンプルを同定します。
5回目はレポート作成。同定した底生動物の指数を用いて,調査地の水質や河床の安定度や種の多様度を算出し,河川環境を評価します。そして,上流と中流の評価結果を比較し,違いを生じさせた理由などについて考察します。
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自然環境調査法A(自然環境調査法)
自然環境調査法は長野県菅平高原にある筑波大学菅平高原実験センターにて,4泊5日の日程で毎年8月下旬に実施しています。
この実習は草原の植物観察から始まり,草原〜森林の昆虫採集,標本作製,河川での水生昆虫採集,土壌動物の採集,採集した昆虫や土壌動物の同定,そして根子岳登山をしながらの植物のフェノロジー調査と,メニュー満載です。生物漬けの5日間を送ることにより,生物を見る目が変わること請け合いです。
現地集合,現地解散のため,交通費はちょっとかかりますが,センターの職員の方が朝昼晩と美味しい食事を作って下さいますし,宿泊費も1泊800円と格安です(昨年度より¥300ほど値上がりしましたが)。
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「虫愛づる姫君」の作り方
菅平高原は私が大学院生時代の大半を過ごした場所で,私にとって研究や教育の原点と言える場所です。古い書類を整理していたら,菅平高原での生活を終えて,福島大学に着任した時に自分を紹介する文章の載った広報誌が出てきました。そこに自分が書いた文章「『虫愛づる姫君』の作り方」を引用してみます。
私は大学院生時代からここ福島大学に赴任するまでの数年間を,長野県の菅平高原にある実験センターで過ごしました。なにしろ高原ですから,夏になると多くの大学が(避暑を兼ねた)セミナーや実習を行います。生物や地学専攻の学生の実習が主なのですが,中にはちょっと変わった集団もやってきます。「涼しい高原で自然と星空を満喫しよう」などという教官の甘い言葉に騙された(?)お嬢様短大の学生さんたちは,その典型的な例でした。
なにしろ,虫も殺さぬ(殺せぬ?or 触れぬ)お嬢様たちに対して,センターに着くなり捕虫網を持たせて,「さあ採集だ!」と草原に連れ出すのですから,ブーイングの嵐です。渋々ついてくればいい方で,網(ネット)などとっとと放り投げてしまう子やさっそく家に帰ると言い出す子,などなど。そこでヒラヒラと蝶々などが飛んでこようものなら,悲鳴を上げて逃げ惑う始末。ところが,毎年たいていそんな時,一人の学生の何気なく振った捕虫網の中に,トンボか蝶々が入ってしまいます。すると必ず拍手喝采。採集した子は得意満面(自分の採集品には決して触りませんが・・・)。やがて,一人また一人と虫を追いかける子が現れ,終いには一匹の蝶を数人のお嬢様がネットを振り回して,「ちょっと,それ私のぉー」と叫びながらの取り合いになります。彼女たちの中に眠っていた狩猟本能が目覚めてしまったわけです。やがて,彼女たちはネットに入った蝶を自分で殺せるようにさえなり,挙げ句の果てにはそれら採集品を自分の手で標本にして,標本箱の中に入れて大事に持って帰ります。「虫愛づる姫君たち」の出来上がりです。そして,自分たちの住む街に帰った後で,必ずこう感じるそうです。「自分の周りの今まで気がつかなかった小さな自然に目が向くようになった」と。
私はこの大学でも「理科・生物」という教科を通じて,一人でも多くの学生に自然の素晴らしさ,大切さを教えたいと思っております。
環境解析演習
生物を用いた環境評価
実験・実習とはちょっと違いますが,新カリでは環境システムマネジメント専攻の必修実践科目(旧カリでは選択必修),環境解析演習についても紹介しておきましょう。この科目はオムニバス形式で, 6〜7人の先生が2〜3回ずつ講義+演習という組み合わせで授業をします。私は環境の状態を測る「ものさし」として有用な生物(環境指標生物)を題材にして,福島大学のキャンパス内の環境評価を授業の中で実際に行ってもらっています。
2010年度の担当は柴崎先生,木村先生,黒沢先生,川越先生,塘の5人ですが,2011年度は高貝先生が復帰される予定です(2010年夏まで在外研究中)。2012年度からは渡邊先生が復帰される予定です(2011年度まで副学長のため担当できず)。