2010.10.08 |
駒止湿原の土壌性カニムシのデータを更新しました。
|
---|---|
2010.04.30 |
カニムシのページをアップしました。
|
2010.04.16 |
カニムシのページを作成しました。
|
カニムシ
カニムシってどんな虫?
カニムシは昆虫ではありません。クモやサソリの仲間(鋏角類)です。土壌性のカニムシは良い環境指標です。
カニムシの画像を入れる予定ですカニムシ類は節足動物門鋏角亜門クモ形綱カニムシ目に属する小型動物で,体長は約1~7mm程度しかありません。クモの仲間ですから,体は頭胸部と腹部からなります。頭胸部背側の側方部に1〜2対の単眼がありますが,これを欠く場合もあります(無眼となる)。頭胸部には6対の付属肢があり,一番前の付属肢は先端が鋏になります。2番目の付属肢が触肢と呼ばれる大型の鋏です。この鋏の先端には毒腺が開口する仲間もあります。3番目から6番目の計8本の付属肢が歩脚ですが,前2対の歩脚と後2対の歩脚とでは形態的に差異が認められます。
カニムシ類は主にトビムシ類やダニ類などの小型節足動物を捕食する肉食動物ですが,その生息場所は様々で,森林土壌中,石下,樹皮下.朽ちた植物中,哺乳類や鳥類の巣の中,昆虫の体表上,潮間帯や岩の間隙,水際の湿った海藻中,洞穴や家屋内など多岐にわたります。極地と水中を除いた環境に広く生息すると言われています。生態や行動に関しても,受精前に求愛ダンスを行うことや雌は卵を腹部の育嚢内で哺育することなど,興味深い点が多く知られています。
日本からは60~70種類のカニムシ類が記録されています。
カニムシの画像を入れる予定です現在,日本からは11科62種が記録されています。ただし,Harvey (2009)のホームページには日本産として67種が記録されていることになっています。日本から記録されている科はツチカニムシ科,ケブカツチカニムシ科,コケカニムシ科,イソカニムシ科,リクイソカニムシ科,サバクカニムシ科,ウデカニムシ科,イボカニムシ科,カニムシ科,ヤドリカニムシ科,メクラカニムシ科の11科です。福島県では加藤・塘(2002)によって中通り地方北部,浜通り地方北部の土壌性カニムシ相については明らかにされていますが,それ以外の地域ではファウナに関する知見がほとんどありません。そこで,駒止湿原や尾瀬国立公園編入地域の調査が可能な2010年にこれらの地域(会津地方南部の高山地帯)のカニムシ相(主に土壌性カニムシ相)を調査しようと考えました。
世界のカニムシ相に関しては,Harvey, M. S. のホームページ(2009年版:http://www.museum.wa.gov.au/arachnids/pseudoscorpions/)で詳しく知ることができます。国ごとに記録されているカニムシ類をソートできるので,便利です。
福島県からはヤドリカニムシ科,ツチカニムシ科,コケカニムシ科,イソカニムシ科の4科に属する7属12種1亜種が記録されています。
以下のリストにあげた種類以外に,未同定種として安達太良山の山頂付近からParobisium属の一種が,福島市北部からMicrocreagris属の一種がそれぞれ採集されています。
福島県中通り北部(中北)及び浜通り北部(浜北)から記録されたカニムシ類
- 1.モリヤドリカニムシAllochernes japonicusMorikawa
- 浜北
- 2.オオヤドリカニムシMegachernes ryugadensisMorikawa
- 中北
- 3.メクラツチカニムシ属の一種Mundochthonius sp.
- 中北・浜北
- 4.オウギツチカニムシAllochthonius opticus(Ellingsen)
- 中北・浜北
- 5.キタツチカニムシAllochthonius borealisSato
- 中北
- 6.アカツノカニムシPararoncus japonicus(Ellingsen)
- 中北・浜北
- 7.チビコケカニムシMicrobisium pygmaeum(Ellingsen)
- 中北・浜北
- 8.ミツマタカギカニムシBisetocreagris japonius(Ellingsen)
- 中北
- 9.チビカギカニムシBisetocreagris pygmaea(Ellingsen)
- 中北
- 10.フトウデカギカニムシMicrocreagris macropalpusMorikawa
- 中北
- 11.イソカニムシGarypus japonicusBeier *1
加藤与志輝・塘 忠顕(2002)福島県中通り北部及び浜通り北部における土壌性カニムシ類,福島生物,(45): 19-24.
*1 イソカニムシは浜通り南部からの記録
福島県石川郡古殿町のスギ植林地・伐採地及びその周辺にある雑木林から記録されたカニムシ類
- 【スギ伐列】2003年11月19日・・・スギ伐採直後のリター
- 1.メクラツチカニムシ属の一種Mundochthonius sp.3齢若虫1個体のみ
- 【スギ伐列】2008年3月30日・・・スギ伐採5年後の「伐採した場所」のリター
- 1.チビカギカニムシBisetocreagris pygmaea (Ellingsen)3♀2♂
- 【スギ残列】2008年3月30日・・・スギ伐採5年後の「スギを残した場所」のリター
- 1.アカツノカニムシPararoncus japonicus(Ellingsen)3齢若虫3個体
- 2.チビカギカニムシBisetocreagris pygmaea (Ellingsen)1♀
- 【スギ植林地周辺の雑木林】2003年11月19日・・・やや湿った場所のリター
- 1.メクラツチカニムシ属の一種Mundochthonius sp.4♀2♂2齢若虫2個体
- 2.ミヤマツチカニムシAllochthonius montanusSakayori2♀5♂3齢若虫2個体
- 3.アカツノカニムシPararoncus japonicus(Ellingsen)6♀3齢若虫4個体
- 4.チビカギカニムシBisetocreagris pygmaea (Ellingsen)2♀1♂
- 【スギ植林地周辺の雑木林】2003年11月19日・・・やや乾いた場所のリター
- 1.アカツノカニムシPararoncus japonicus(Ellingsen)2♀2齢若虫1個体
- 2.チビカギカニムシBisetocreagris pygmaea (Ellingsen)1♂
フォレストパークあだたら内の小規模な雑木林,アカマツ・落葉樹混交林,杉田川上流のブナ林のリターから記録されたカニムシ類
- 1.オウギツチカニムシAllochthonius opticus (Ellingsen)
- 雑・混・ブ
- 2.メクラツチカニムシ属の一種Mundochthonius sp.
- 混・ブ
- 3.アカツノカニムシPararoncus japonicus (Ellingsen)
- 雑・ブ
- 4.チビコケカニムシMicrobisium pygmaeum (Ellingsen)
- 雑・ブ
- 5.チビカギカニムシBisetocreagris pygmaea (Ellingsen)
- ブ
雑:小規模な雑木林,混:アカマツ・落葉樹混交林,ブ:杉田川上流のブナ林
会津地方南部の高山地帯のリターに生息するカニムシ類
- ツチカニムシ科
- 1.ヤマメクラツチカニムシMundochthonius japonicus scolytidis Morikawa駒止湿原のブナ林,田代山(1400m, 1600m, 1800m),舟岐林道(1660m),会津駒ヶ岳(2088m)
- 2.イトウカブトツチカニムシ駒止湿原のブナ林,舟岐林道(1660m)
- *.メクラツチカニムシ属の一種(若虫)Mundochthonius sp.駒止湿原のブナ林,田代山(1800m),田代山山頂(1971m),舟岐林道(1660m),会津駒ヶ岳(2088m)
- 3.タムラツチカニムシ駒止湿原のブナ林,田代山(1400m, 1800m),舟岐林道(1660m),帝釈山(1750m, 1817m, 1840m),会津駒ヶ岳(2088m)
- *.Allochthonius属の一種(若虫)・・・おそらくタムラツチカニムシ駒止湿原のブナ林,田代山(1400m, 1800m),舟岐林道(1660m),帝釈山(1840m)
- *.オウギツチカニムシ?会津駒ヶ岳(2088m),舟岐林道(1660m),帝釈山(1817m)
- 4.キタツチカニムシ会津駒ヶ岳(2088m)
- コケカニムシ科
- 5.アカツノカニムシPararoncus japonicus (Ellingsen)駒止湿原のブナ林
- 6.チビカギカニムシBisetocreagris pygmaea (Ellingsen)駒止湿原のブナ林
- *.カギカニムシ属の一種(若虫)田代山(1400m, 1600m)
- 7.キイロコケカニムシ駒止湿原のブナ林,田代山(1400m),舟岐林道(1660m)・・・九州南部の山地帯に分布する種のため,別種か?
- *.コケカニムシ科の属不明種(若虫)駒止湿原のブナ林,帝釈山(1750m)
- *.チビコケカニムシ?舟岐林道(1660m)
会津駒ヶ岳,田代山,帝釈山のサンプルは林道や木道沿いの林床のリターから得た。「田代山」は猿倉登山口からの登山道沿い。「帝釈山」は舟岐林道沿いを含む。