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摺上川ダム建設前に摺上川から記録された底生動物(水生昆虫) 1996年〜1997年の記録(9目63科151属239種)
摺上川ダム建設前の1996年〜1997年にかけて,源流域から下流域までの間の15地点で水生昆虫相調査を実施した。その結果,9目63科151属239種(当時の分類体系による)の水生昆虫の生息を確認することができた。摺上川が流程32km,流域面積314.3k㎡とそれほど大きな河川ではないことを考えると,その水生昆虫相は非常に多様と言える。特に山地渓流域性の種や北方系の種が多く生息する「獅子内」よりも上流の上・源流域の種の多様性が高いことが摺上川の大きな特徴である。
摺上川の水生昆虫相の変遷について,東城幸治・岸本 亨・塘 忠顕,福島大学特定研究[自然と人間](5): 47-54 (1997).
摺上川の水生昆虫相 ー上・源流域の水生昆虫相を中心にしてー,塘 忠顕・東城幸治・岸本 亨,福島大学特定研究[自然と人間](6): 53-64 (1998).
摺上川ダム建設後に摺上川から記録された底生動物 2005年以降の記録(水生昆虫+それ以外の底生動物:86科179属263種)
2005年9月に摺上川ダムは完成したが,完成前に実施された試験湛水後の放流水によって,ダム堤体直下の流域の底生動物相は大きな影響を受けたようである。しかし,その後,底生動物の種類数は徐々に回復傾向が見られる。ただし,ダム堤体に最も近い場所に生息する底生動物の種類数が他の場所のそれに比べて顕著に少ないこと,造網型トビケラ類の優占状態が継続・拡大していることなど,いくつかの問題も生じている。
摺上川ダム建設後におけるダム周辺流域の底生動物相,塘 忠顕・山下 雄・遠藤絢香,福島大学共生システム理工学類,共生のシステム,2: 52-53 (2006).
摺上川ダム建設後における摺上川の水生昆虫相,塘 忠顕・山下 雄,福島大学共生システム理工学類,共生のシステム,5: 55-70 (2007).
阿武隈川水系摺上川ダム直下流域における底生動物相 〜2007年の調査結果から〜,塘 忠顕,福島大学共生システム理工学類,共生のシステム,6: 44-53 (2008).
阿武隈川水系摺上川ダム直下流域における底生動物相 〜2006年から2008年の調査結果の比較〜,塘 忠顕,福島大学共生システム理工学類,共生のシステム,7: 34-41 (2009).
摺上川の左支川,焼松川と布入川から記録された水生昆虫 2008年〜2009年の記録(9目58科106属136種)
調査地「茂庭下」から記録される底生動物の種類数は摺上川ダム堤体直下流域の他の場所から記録される種類数と比べて顕著に多い。「茂庭下」の直上で摺上川に流入する支川,布入川と,その上流で布入川に流入する焼松川の水生昆虫相を調査した結果,「茂庭下」から記録される底生動物の種類数が多いのは,これら支川の効果である可能性が高いことが明らかになった。
阿武隈川水系摺上川左支川(焼松川・布入川)の水生昆虫相 〜摺上川の水生昆虫相との比較〜,塘 忠顕・星 竜樹,福島大学共生システム理工学類,共生のシステム,10: 48-62 (2010).
原瀬川の深沢橋付近(二本松市毘沙門堂地区)から記録された水生昆虫(7目44科75属96種)
原瀬川はその上流域に岳ダムが設置されている河川である。この川の深沢橋付近ではかなり多くのモンカゲロウとフタスジモンカゲロウの幼虫が同所的に生息しており,モンカゲロウの羽化時期である春まではモンカゲロウの幼虫が優占し,その後,フタスジモンカゲロウの羽化時期である夏まではフタスジモンカゲロウの幼虫が優占する。深沢橋付近は水生昆虫の多様性が顕著に高い場所でもある。
原瀬川深沢橋付近(二本松市毘沙門堂))で確認された水生昆虫類,塘 忠顕・鈴木愛里・佐藤 昌弘,福島生物,(46): 37-42 (2003).