研究者インタビュー
研究者インタビュー
共生システム理工学とはどんな学問分野なのだろう?
新しい枠組みの中で、実際にどんな研究が展開されているのだろう?
そんな「?」を胸に、各分野の研究者にインタビューしてみました。
評価と意思決定
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優れているか?
劣っているか?
優劣がつかないか?
たった、これだけのことだけど。。。 -
共生システム理工学類 数理・情報学コース
共生システム理工学研究科 数理・情報システム分野 教授藤本 勝成
PROFILE
博士(理学)。専門はシステム科学。東京工業大学総合理工学研究科博士後期課程修了(システム科学専攻)。
1995年東北大学工学部助手。1999年福島大学経済学部助教授。2013年より現職。
評価とは、2つの評価対象の間に優劣をつけることです。
評価が点数によって表されることが多いのは、数字の順序(大小)に優劣を対応させることが容易だからです。さらに、順位をつけることも、計算することもできます。辞書では、言葉に順序を付けて並べています。
一方で、点数の代わりに、「グー」「チョキ」「パー」をもちいて評価するとどうなるでしょうか?優劣は付けられますが、順位はつけられません。でも、こういうモノって、身の周りにはたくさんありませんか?また、優劣がつけられない場合でも、「差が無くて優劣が付けられない場合」と「そもそも比較できない場合」の2種類があります。割り切れる(優)、割り切る(劣)で優劣をつける場合、6と3、6と2の間には優劣をつけられますが、3と2の間には優劣がつけられません。こういうモノも、身の周りにはたくさんありませんか?
『評価』とは、「評価対象」と「順序を持っている何か」を結ぶ関数を考える・見つけることと言えます。この関数を分析することで、望ましい評価の方法や高い評価を得る方法を見つける事ができるかもしれません。
第4次産業革命のもたらす技術革新を背景に、Society5.0の実現、その進展の中で、社会を創造し先導する人材の育成が我が国の急務となっています。数理・情報学コース・数理・情報システム分野では、自然・社会・サイバー空間をモデル化するための数理科学と情報システムの設計・開発・運用を行うための情報科学を見渡したカリキュラムを備え、技術革新と社会課題をつなげ、プラットフォームを創造する人材、様々な分野においてAIやデータの力を最大限活用し展開できる人材を育成するための学習・研究を行っています。
最先端の流体工学の研究と、新しい機能物質の開発とその応用
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流体を使って
私たちの生活を豊かにする。 -
共生システム理工学類 物理・システム工学コース
共生システム理工学研究科 物理・メカトロニクス分野 教授島田 邦雄
PROFILE
博士(工学)。専門は流体工学。東北大学大学院工学研究科博士後期課程修了。
2004年より福島大学共生システム理工学類准教授。2010年より教授。2004年より現職。
皆さんが中学校や高校で勉強したように、物質の三態と言って、物質は固体、液体、気体の3つに大きく分けることができます。そのうち、液体と気体を総称して流体と言っています。私はこの流体を研究に扱っていますので、おおざっぱに言うと世の中の3分の2の科学を扱っていることになります。したがって、小さくはナノテクノロジーから大きくは宇宙工学まで研究対象となります。例えば、磁性流体という磁石をドロドロに溶かしたような液体がありますが、これはナノテクノロジーの産物で、これは磁石に反応する新しい機能性流体として注目されており、これをパワーアプさせた磁気混合流体(通称MCF)を2001年に私が開発しました。これにより、ものづくりの最終段階で必ず必要な研磨の技術や、地震などの振動を止めるダンパーの開発、磁性や導電性を有する機能材料の開発が一段と飛躍し、世界中から注目されています。特に、新しいゴム(MCFゴム)として機能材料が発展して、ロボットなどのセンサーに使われるだけでなく、再生可能エネルギーとして注目される電磁波による発電が可能になり、太陽電池やエナジーハーベスティングに期待されています。また、最近、放射能発電にも成功しており、将来の放射能除去や遮蔽の新しい技術として注目されて、ノーベル賞級の研究と目されています。
一方で流体工学を大きく見ると、飛行機はなぜ飛ぶのかといったことの解明や、ロケットを効率よく飛ばす方法なども研究で扱っています。さらに、再生可能エネルギーの開発に絡んで新しいタイプの風車やマイクロ水車などの開発も行っています。
このように、私たちの生活とは切っても切れないのが流体であり、これを研究することによって私たちの生活における重要な場面を支え、豊かな生活を実現することに繋がります。
ナノ制御による高機能性材料の作製と特性解析
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ありふれた原料をナノスケールで
コントロールして環境問題や資源問題に
配慮した高機能性材料をつくりたい! -
共生システム理工学類 物質科学コース
共生システム理工学研究科 物質・エネルギー科学分野 准教授中村 和正
PROFILE
博士(工学)。専門は材料工学、材料分析。東京工業大学大学院総合理工学研究科材料物理科学専攻博士後期課程修了後、中央大学助教、東京工業大学特任助教を経て、2010年より現職。
材料工学は、世の中のあらゆる材料(物質がかたちを成し機能を発するもの)をターゲットにし、そのつくり方、構造、特性、製品化など全てを研究する複合領域分野です。その中で私は、ありふれた原料を用いナノレベルの物質添加または表面改質を施すことで、高機能な炭素材料や複合材料をつくり、その特性解析を行う研究を進めています。研究の一つの柱が「燃えない炭をつくろう!」です。それには炭素材料の酸化挙動を解明し、耐酸化特性を付与する必要があります。もし燃えない炭ができれば、非常に苛酷な条件下でも使用可能となります。例えば、ロケットのような宇宙分野の発展にも十分寄与できるようになります。もう一つの研究の柱が、「バイオマス資源を炭にして用途を変身させよう!」です。バイオマス資源を加熱処理して作製した炭素材料を、複合材料、浄化材料、電池などに応用展開しています。一例を挙げると、皆さんが口にしているナタデココ®は、バクテリアが排出したセルロースナノファイバーです(図1)。これを化学的に処理し加熱すると、耐熱性、耐薬品性、高強度のカーボンナノファイバーとなり、炭素材料と複合化することで、カーボンナノファイバー強化炭素複合材料を作製することに成功しました(図2)。この複合材料は、耐摩耗性が既存の材料と比較して飛躍的に向上したので、車輌などに用いれば、より軽量でより摩耗に強いモーターやブレーキディスクなどに展開できます。
材料の研究は「せんみつの世界」と言われます。1000回に3回成功すればよいほうであるという意味です。多くが失敗なのです。でも失敗を恐れず、苦難を乗り越え、その先にある成功を勝ち取ることは、貴重な経験、人生の糧となると思います。このような材料工学の世界に興味があるみなさん、私と一緒に研究してみませんか?
「よい」音環境の創造に向けたサウンドスケープ研究
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サウンドスケープの評価法の
国際標準(ISO)化に向けて、
福島大から発信中 -
共生システム理工学類 社会計画コース
共生システム理工学研究科 生命・環境分野 教授永幡 幸司
PROFILE
博士(芸術工学)。専門はサウンドスケープ、音響学(主に、騒音分野)。九州芸術工科大学大学院博士後期課程修了。1999年より福島大学行政社会学部助教授。2004年より共生システム理工学類助教授、2007年より同准教授。2018年より現職。
私たちは皆、音に取り囲まれて生活しています。聴力に異常がなければ、生きている限り、音から逃げることはできません。そんな音の世界を少しでも「よい(良い、善い、好い、…)」ものにしたい、というのが、私の目標です。
では、「よい」音環境とはどのようなものでしょうか?これは、実は、とても難しい質問です。評価する場所によって異なってくるのはもちろんのこと、評価する人によっても異なってくるでしょうし、評価する人がおかれているコンテクストによっても異なってきます。こうした、誰が、どういう文脈で、どういう音環境を評価しているのか、ということを踏まえて、音環境の問題を考えようというのが、私の専門であるサウンドスケープの基本的な考え方です。ちなみに、サウンドスケープは、ISO 12913-1で、「あるコンテクストの中で、個人又は人々が、知覚・経験・理解した音環境」と定義されています。
サウンドスケープという分野では、現在、その評価方法の国際標準(ISO)化が進んでいます。私も専門家の一人として、規格づくりに携わっています。そこで、私たちの研究室では、規格づくりや規格改訂の際の基礎となる研究に取り組んでいます。中でも、評価に用いる言葉の日本語への翻訳可能性の検討は、最近の私たちの研究室の主要な研究テーマの1つであり、これは国際的に見ても非常に重要な研究テーマです。なぜなら、評価という行為が言語に極めて強く依存しているため、評価に関する事項の国際標準化には、その翻訳可能性が大きな問題となるからです。
また、音響式信号機や駅の音案内のような視覚障害者にとってのバリアを解消するために設置された音が、より役立つようにするためには、どのようにデザインしたらよいのかを考えることが、私たちの研究室のもう1つの主要な研究テーマです。
学類・大学院案内
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