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  地方都市に地下鉄はない
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Koji Nagahata


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地方都市に地下鉄はない --地方における音の啓発事業の現状-- 飛行機のエンジン(120dB)、車のクラクション(110dB)、電車のガード下(100dB)、うるさい工場の中(90dB)、地下鉄の車内(80dB)、電話のベル(70dB)、ふつうの会話(60dB)、しずかな教室(50dB)、図書館(40dB)、ささやき声(30dB)。 この音のリストは、福島市が数年前に小学生向けに作成した環境副読本に掲載された、「音の大きさ」を解説する図に挙げられたものである。一見すると、何の変哲もないリストに見えるが、福島市在住の小学生に配るという点を考慮すると、問題点が浮き上がってくる。リスト上の大きな音の多くが、福島では聞けない、または、聞くことが困難な音なのだ。 ─ 福島市から最寄りの飛行場までは車で1時間強かかり、1日の発着便数は両手の指で十分数えられる。電車は新幹線を除き地上を走っており、地下鉄なんか存在しない。工場もあるにはあるが、小学生にとってそんなに身近な存在ではなかろう。今時電話のベルというのも、とても珍しいのではないか。 かといって、福島に大音量を発生する音源が存在しないわけではない。例えば、秋には鳥追いのための爆音器の音が聞えてくる。学校の運動会(とその練習)の放送もかなりの音量である。また、最近、夜は暴走族が頑張っているようである。 子どもたちに音についての理解を深めてもらうには、実際に聞いたことがない音の大きさを紹介するよりは、彼ら自身にとって身近な音の大きさを紹介するほうが、遥かに効果的であろう。おそらく、副読本を作成した担当者も、そうは思っていたに違いない。しかしながら、スタッフに騒音の専門家がいるわけではない地方都市の役所においては、担当者にとって入手可能な資料をかき集めて、それらを参考に作成するしかないのが実情であり、その結果が冒頭のリストとなったのである。これは、福島市だけの問題ではない。 このような現状を踏まえて一つ提案がある。学会として、学校や役所等が子ども向けや一般市民向けの騒音についての啓発資料を作成する際に自由に使える資料集を作成し、学会ホームページを利用して広めることはできないだろうか。利用者からの声を基に、改訂を繰り返していけば、数年後には、素晴らしい資料集ができあがると同時に、学会と地方都市の役所との間に深いつながりができあがっていることであろう。 (福島大学 永幡幸司)

(初出:騒音制御 27(5))




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