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先日、神戸の仮設住宅に住む二人の視覚障害者を訪問する機会があった。
右を見ても、左を見ても同じ形の建物が規則正しく並んでいる。少なくとも私にとっては、どこを歩いているのかを知る手がかりの殆んどない町並みである。目の見えない彼らにとっては、どのような環境なのであろうか。
彼らが言うには、自分の位置を知るための手がかりになるようなものが殆んど無いから、単に家に帰るだけでも、未だによく迷子になるということである。
仮設住宅は、開設当初から老人や障害者など「弱者」優先と言われていたが、その「弱者」が生活するための最低限の配慮さえされていないのが現実である。しかし、このような現実は、何も被災地に限った話ではない。
「弱者を考えた」などと口で言うのは簡単であるが、そう言うことと、実践が伴っていることとは、別問題である。ここらで一度、本当に「弱者」を考えた街づくりとはどのようなものであるのか、じっくり検討してみる必要があるのではないか。
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(初出:西日本新聞1995年10月8日付,掲載時タイトル:弱者を考えた町づくりを)
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