東日本大震災前後の福島県相馬市松川浦の植物標本
東日本大震災の際に,福島県相馬市では8.9 mの津波に襲われ,県立自然公園の松川浦でもクロマツ植林がほぼ壊滅し,砂州が決壊するなど,地形や植生に大きな変化が生じた。共生システム理工学類生物標本室には, 2003〜2004年の福島県との生物多様性調査や,2007年以降の相馬市との市史編さんのための調査など,松川浦で震災前に採集された1,357点のさく葉標本が保管されている。また,津波直後の2011年の生物多様性保全研究室や協力者らによる採集の約250点のさく葉標本も保管されており,震災前後の植物相の変化を実証する証拠標本となっている。写真の標本は,知られていた県内唯一の個体群が津波で土壌ごと消失したハマハナヤスリの2004年の生物多様性調査時の標本(左)と,元は淡水だった水路に津波の影響で2011年に現れたと思われる,希少な汽水生植物カワツルモ(右)。
資料点数 約1,600点
保管場所 福島大学共生システム理工学類生物標本室(理工学類研究実験棟7階)
参考文献 福島県生活環境部自然保護グループ(編)(2005)重要湿地松川浦総合調査報告書. 福島県生活環境部自然保護グループ, 福島.
執筆:黒沢高秀(共生システム理工学類)
出展:
福島大学貴重資料集 第3号