ふくしま県民の森「フォレストパークあだたら」におけるハムシ相及びオトシブミ相
1.はじめに
ふくしま県民の森「フォレストパークあだたら」ではこれまでに様々な昆虫相調査が実施されてきたが,種の多様性の最も高い甲虫類については,水生種を除くと全く調査が実施されていない。そこで本研究では,フォレストパークの利用者やボランティア指導者が自然観察を行う時に目に留まったり,興味を持ったりするグループの条件(観察が容易な大きさで,色彩や形態に多様性が見られ,生態や行動に興味深い点があり,昼行性である)を満たす甲虫類として,ハムシ類とオトシブミ類を選び,それらのファウナ(ハムシ相とオトシブミ相)を明らかにするための調査を実施した。
2.調査方法
調査は2009 年10~11 月と2010 年4~11 月の期間に毎月1 回ずつ,フォレストパーク内の遊歩道沿いや広場などの植物上でハムシ類やオトシブミ類を見つけ次第採集する「見つけ採り法」によって実施した。
3.結果及び考察
本研究における調査によって,フォレストパークからは10 亜科40 種のハムシ類と2亜科12 種のオトシブミ類が記録された。
記録されたハムシ類の中で種類数の多い亜科の順位は,日本産,福島県産,フォレストパーク産の間で大きな違いは認められなかった。ただし,カメノコハムシ亜科とツツハムシ亜科の割合は日本産のそれと比べるとやや高い傾向が認められ,逆にノミハムシ亜科の割合はかなり低かった。カメノコハムシ亜科とノミハムシ亜科の割合が日本産のそれと異なったのは,両亜科に属する種の見つけ易さに起因するもので(前者は見つけ易く,後者は見つけづらい),本調査における採集方法に原因があるものと考えられた。一方,ツツハムシ亜科の割合が日本産のそれと異なったのは,様々な植物を食草として利用できる広食性の種が多いツツハムシ亜科にとって,植物相が豊かなフォレストパークは生息環境として好適であるからではないかと思われる。
記録されたオトシブミ類の種類数の亜科毎の割合は,日本産,福島県産はチョッキリゾウムシ亜科が60~70%程度,オトシブミ亜科が30~40%程度となっているが,フォレストパーク産はその逆で,チョッキリゾウムシ亜科が25%,オトシブミ亜科が75%であった。これは,本研究においては揺籃を手掛かりとして調査を行ったため,すべての種類が揺籃を作るオトシブミ亜科に対しては効果的であったが,一部の種類しか揺籃を作らないチョッキリゾウムシ亜科に対しては効果がなく,少数の種類しか採集できなかったためと考えられる。
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